|
「編集長『秘話』」 伊藤文学著 文春ネスコ(215p)2001.12.24 1,500円(税別) |
||
「秘話」とは、それまで世間に知られることの無かった珍しい話を意味するが、「薔薇族」の30年を語ったこの本には、日本で初の同性愛雑誌の編集長ならではの苦労や、喜びが紹介されている。 また、同性愛ではない伊藤さんが、様々な人々との出会いによって、同性愛──特にゲイの心──について理解を深めていく過程も語られている。 例えば、創刊当初の出来事。「薔薇族」が全国の書店に並ぶためには、取次店と交渉をしなくてはなりません。同性愛雑誌ということで、担当者は「誰が買うのか」と、初めの内は興味を示さなかったが、結局、取り次いで貰えることになり、著者はこの日の交渉の成功が「同性愛者の独立記念日とさえ思っている」と述べている。 同書は、ゲイだけでなく、同性愛について知らない人に向けても書かれているが、それだけに世間の人々にこれだけは知って欲しいということが分かりやすく説明されている。 前書きにも述べられているように、著者は「同性愛は異常でも変態でもない」から、「当たり前のことだと世間に認めさせたい」と、雑誌を出し続けてきた。 同書も「手に取った皆さんが、少しでも同性愛のことを理解してくれることで、偏見が少なくなればと願って執筆した」とある。 同性愛が、またゲイが、身近な存在であることを理解して貰うために、著者は「薔薇族」読者の生の声の伝わってくる手紙を紹介している。 それらに綴られた心からの言葉は、ゲイの読者には、自分たちの気持ちを代弁したものとなり、また、同性愛について初めて知る人の心には、同じ人間の言葉として訴えかけてくることでしょう。(健) |