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それは18世紀のこと 「経度への挑戦」 デーヴァ・ソベル著/藤井留美訳 翔泳社(206p)1997.7.25 1,400 円 |
英国で23週連続No.1ベストセラーと帯にあるように、ノベルさながらの時計職人の物語。事は1714年、英議会が経度法を制定し、併せて「経度を測定できたものに国王の身代金に相当する賞金をあたえる」に、始まる。当時、戦艦の座礁など海難事故が相次いでいた。 経度とは子午線との角度をいうが、この測定は困難を極めた。太陽、月、星を観測する天文学的方法が主流を占めていた内、クロノメーター、きわめて高精度の海上時計に挑戦し続けたジョン・ハリソンが物語の主人公である。緯度は地球を輪切りにしたもの、赤道を零度とすればいい。しかし、経度は極を軸に自転しているから不定で、人が決めねば定まらないのだ。 その経度の測定は、天文学的な絶対位置の把握以外に、時間、起点からの経過時間によっても行える。だが、24時間で一周するから、経度1度は4分に相当、1度の距離は赤道上で実に107キロ、秒単位の誤差しか許されない。 時は18世紀、振り子時計の時代だ。経度委員会、議会、国王、学会、それに登場人物の個性があいまって、ドタバタ風な展開が真面目につづられていく。おなじみの歴史的人物のあれこれも興味深く、ニュートン、ハレー、スウィフト、ガリレオ……、読み物としての秀れた科学史がここにある。(修) |