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「ラスト・サンクチュアリ」 クレイグ・ホールデン著 近藤純夫訳 扶桑社(478p) 1998.2.20 2,190円 |
ロードムービー転じて 特にアメリカ映画が得意とする領域にロードムービーがある。旅の目的はいくらかささいなものであるにはあるが、道の果てはどうなるか知れない。見知らぬ町、広大な砂漠、人々との触れ合い、「バグダット・カフェ」にその典型をみることができる。またその原形は「シェーン」にも認められ、さらにとんでもない事件に巻き込まれるという点で「ダイハード」にも通ずる。この小説の主人公は目的は明白だ。だが、ロードムービーには違いない。 オカルト軍団と出会う ジョーはいつも兄の厄介の後始末に駆り出される。再々度、デトロイトを心細い持ち金とともに旅立ち、家出した兄テリーを連れ戻しに向かう。オンボロ車が途中で故障、ヒッチハイクの相手の訳有りげの男女はとんでもない訳有り、突然の殺人事件の見受け人へと為らされるカルト集団の先鋭だった。一転、指名手配を受けるハメとなる。 優れたミステリーはエンターテインメントを具有しているのはもちろんペーソスと人生のいくばしかを匂わせるが、この作品も登場人物の心のひだまでよく描かれており、上質で先へ先へと興味を繋いでくれる。 最後は大団円 人の住む極北の地、アラスカへと舞台は移る。戦う相手はカルト教団のアモン教だけではなくFBIもカナダ警察もだ。男のリックが殺人犯、奇妙にも女カリとの追跡劇は彼らのサンクチュアリへと向かう二人行だ。 そして彼女との束の間の孤独者同士の愛、次第にヒーロー化していく主人公、テンポが素晴らしく、情景描写も的確でまさにムービーを見ているようで快適な読み心地で一気に結末に至る。(修) |