円谷幸吉とは-雑学大事典-つ


円谷幸吉


東京オリンピックのマラソンで3位に入賞した陸上自衛隊の円谷幸吉三等陸尉(27)は、1968年1月、2通の遺書を残して自殺した。一通は体育学校関係者への謝罪、もう一通は両親にあてたものだった。

自殺そのものもさることながら、両親にあてた遺書の内容の異様さは各方面に衝撃を与えた。当時、日本の最も先鋭な劇作家たち、寺山修司、佐藤信、唐十郎の3人が、劇中にその遺書を採用したし、ノンフィクションライター沢木耕太郎は、その著書で全文を紹介しているほどだ。

自殺自体は「長距離ランナーの孤独」という切り口で理解できるが、遺書の内容は一般人の理解を超えている。
- 沢木耕太郎「敗れざる者たち」文芸春秋

両親あての遺書全文

父上様、母上様、三日とろろ美味しゅうございました。干し柿、モチも美味しゅうございました。
敏雄兄、姉上様、おすし美味しゅうございました。
克美兄、姉上様、ブドウ酒とリンゴ美味しゅうございました。
巌兄、姉上様、しそめし、南蛮漬け美味しゅうございました。
喜久造兄、姉上様、ブドウ液、養命酒美味しゅうございました。又いつも洗濯ありがとうございました。
幸造兄、姉上様、往復車に便乗させて戴き有難うございました。モンゴいか美味しゅうございました。
正男兄、姉上様、お気を煩わして大変申しわけありませんでした。
幸雄君、秀雄君、幹雄君、敏子ちゃん、ひで子ちゃん、良介君、敬久君、みよ子ちゃん、ゆき江ちゃん、光江ちゃん、彰君、芳幸君、恵子ちゃん、幸栄君、裕ちゃん、キーちゃん、正嗣君、立派な人になって下さい。
父上様、母上様、幸吉はもうすっかり疲れ切ってしまって走れません。何卒お許し下さい。気が安まることもなく御苦労、御心配をお掛け致し申しわけありません。
幸吉は父母上様の側で暮らしとうございました。

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