その場がど~んともりあがる雑学の本
もう少し目立ちたい雑学<第4章>
武蔵の徹底した風呂嫌いは有名でした。一生を通じて一度も風呂へ入らなかった、という説まであるくらいです。本人も「沐浴せず」と告白しています。
もちろん当時は現代と違い、だれもが毎日のように入浴する習慣はありませんでした。江戸時代初期に関東地方の一部には、「芝湯」といって、芝草で体をふいて風呂がわりにしていた農民の記録も残っています。いまのように、水道や下水道も完備していなかった時代だったので、水がじゅうぶんに出なかったというのが、入浴の習慣がなかった理由です。
が、しかし、そういう当時の時代背景を考慮しても、武蔵の風呂嫌いは徹底していたのです。体の汗や汚れはときどき手桶1杯の湯を使い、しょうゆを煮しめたような柿色の手ぬぐいでふく程度。衣服に垢がしみていても、いっこうに平気でした。おまけにハンカチやティッシュなんかないので、ハナが出ると袖口でふく。体中から異臭を発し、その風体は当時の評判でした。
晩年の自画像に描かれているように、武蔵は渋い赤や褐色の着物を着ていましたが、その理由は汚れを隠すため、というほどに風呂嫌いだったのです。
じつは、武蔵が風呂嫌いだったという確たる史料はないのですが、思うに「60余戦して無敗」ともなると、いつ、試合で殺した相手方から敵討ちをしかけられるかわかりません。のんびり風呂になんか入っているヒマもスキもなかったというのが、真相ではないでしょうか。
「講談社+α文庫」所収
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