その場がど~んともりあがる雑学の本
もう少し目立ちたい雑学<第4章>
鉄のワイヤーです。歌舞伎の見せ場に一つである宙乗りの時間は平均二分半。重い衣装で馬に乗ったりする宙乗りの場面にやんやの喝采を送る観客。演じる役者のほうは短時間とはいえ真剣勝負。
その迫真の演技のかげの立役者は鉄のワイヤーなのです。東京の歌舞伎座では、そのばめんのがある演目の場合、部隊の上と三階席後方の天井裏を結んで、花道の上に直径十四ミリ、長さ約三〇メートルのメインワイヤーを張ります。このワイヤー素線の直径は一本〇・五ミリ程度。その素線を約三〇本よった束をさらに六本、麻芯を中心により合わせます。
メインワイヤーに使われている鋼は、引っ張り強度の強い高張力鋼ではなく、粘り強さの点ですぐれている普通鋼を用いています。それは演技の際など、なにかの拍子に予想外の力が加わっても切れたりしないためです。
ところで、役者はどうやって宙を飛ぶのでしょうか。衣装の下に「連雀」という装置をつけて、これをワイヤーが吊る仕掛けになっています。たとえば、『義経千本桜』に登場するキツネの場合は「連雀」で背中とお尻の二カ所を吊っています。
ワイヤーは一公演(二五日間)が終わるとすべて廃棄され、次の公演にはかならず新品が使われます。
「講談社+α文庫」所収
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