樋口一葉とは-雑学大事典-ひ


樋口一葉


2004年7月の新紙幣切り替えに備えて、新一万円札の印刷が7月29日から始まった。新千円札は10月、新五千円札は12月から印刷を始める。新紙幣は、一万円札は表は福沢諭吉のままだが裏のデザインが変更になり、五千円札は新渡戸稲造から樋口一葉に、千円札は夏目漱石から野口英世に変わる。

新五千円札の顔になる樋口一葉は『にごりえ』や『たけくらべ』で知られ、その知名度から一世を風靡した流行作家のような印象を与えるが、実際には貧困のうちに結核で24歳の生涯を終えている。本名は樋口夏子。貧困のため、近所の質屋伊勢屋に足繁く通っていたという。それでも足りずに、1896年(明治29年)5月、出版社に頼み込んで、前年「文學界」に連載された『たけくらべ』を、「文芸倶楽部」に一括して再掲載してもらった。これが森鴎外や幸田露伴の目に留まり絶賛を浴びたが、時すでに遅く、一葉はその年にこの世を去ったのである。

生前、お金に縁のなかった一葉がお札に起用されるとは、ずいぶんと皮肉な話だ。なお、切り替えの対象になる紙幣は約100億枚に達するため、すべてが入れ替わるには2年がかりになる。(03.08.04)
- 山田風太郎「人間臨終図巻1」徳間文庫

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