その場がど~んともりあがる雑学の本
相手の気をひく雑学<第1章>
作家にもワープロを使う人がふえました。出版社や印刷所が原稿を読むときに、読みにくくて苦労するケースは減っています。しかし、それでも悪筆の手書き原稿に出会う例には事欠かないものです。作家は字がうまい、などと考えるのは、とんだ幻想でしょう。
字の読めない、いわゆる悪筆作家ベスト(ワースト?)スリーをあげると、石原慎太郎(作家・元国会議員。『太陽の季節』で芥川賞受賞)、黒岩重吾(『背徳のメス』で直木賞受賞)、西村京太郎(『天使の傷痕』で江戸川乱歩賞受賞。最近は十津川警部ものの旅行ミステリーで人気)あたり。
とくに、石原慎太郎はデビュー以来悪筆でも有名で、推理小説を書かせた江戸川乱歩が、石原の原稿を受け取ってしばし呆然とした、といわれたほど。
一人称で書いてあるらしいが、イ(ニンベン)しかわからない。僕、俺、儂のどれなのか。思いあまったある編集者が、ご本人に怒る怒る確かめたそうです。すると「ボクのイメージで当然でしょ、僕ですよ」。
一昔前は丹羽文雄(日本文芸家協会理事長を長くつとめた。『厭がらせの年齢』などの作者)が悪筆の横綱。各印刷所で「丹羽担当」と呼ばれる悪筆を解読する専門家を配置してあったほどでした。それでも新聞や週刊誌の連載を書きまくったのですから、解読専門家は病気するヒマもなかったとか。
それにしても悪筆作家ほど、ワープロに切り替えてくれないそうですが、なぜだ!
ついでに遅筆ご三家は、井上ひさし(『手鎖心中』で直木賞受賞)、野坂昭 (『火垂るの墓』などで直木賞受賞)、伊集院静(『受け月』で直木賞受賞)。ただし、この方々の字は読みやすい。遅筆をカバーする意図あり、でしょうか。
「講談社+α文庫」所収
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