その場がど~んともりあがる雑学の本
相手の気をひく雑学<第1章>
いまどきのデパートヘ行けば、赤ん坊のおむつから仏壇、位牌のたぐいまでなんでも間に合い、「ゆりかごから墓場まで」のイギリスの福祉行政ばりのサービスぶり。
墓石の売り場があっても、お棺だけは売っていないって? いや、売りさばいたデパートがたった1軒だけありました。
第2次世界大戦のさなか、東京・新宿の伊勢丹がそれ。昭和19年(1944)の早春には燃料が底をつき、ガソリンの1滴は血の1滴にたとえられたころです。自動車は木炭や薪の一酸化炭素でかろうじて走っている始末で、それと相まって木材も品切れ状態でした。
戦火を最小限に食い止めるため、取り壊した家の古材でも寄せ集めなければ、お棺もつくれない。いっそ死体は竹かごでも編んで入れようか、というところまできてしまいました。ニワトリじゃあるまいし、かごで葬られては浮かばれません。
伊勢丹では苦心して、闇取引でベニヤ板を買い集め、形ばかりのお棺をつくり店に並べたところ、これが飛ぶように売れたそうです。
「講談社+α文庫」所収
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