その場がど~んともりあがる雑学の本
相手の気をひく雑学<第1章>
「人間の心臓は体のどちら側にあるか」といった質問は愚問でしょう。「左側に決まっているよ」との答えが返ってきます。人体解剖の図も模型も、ちゃんと左側になっています。
しかし、こうした医学常識も、鵜呑みにしてはいけません。心臓だけではなく、臓器すべての位置が左右あべこべになっている例もあるからです。内臓逆位症といって、「そうめずらしいケースではない」(専門医)そうです。
右利きの人が大半ですが、左利きの人も世のなかには大勢いるように、内臓が逆転しても病気でもなんでもなく、ふだんの生活にはなんの不自由もしません。
ところが、困るのは病気になったようなとき、病院で診察を受ける際、医者に誤診されやすいことです。
盲腸手術でおなじみの「虫垂」が体の後ろ側にずれている人に対して、医者が虫垂炎を見逃してしまい、裁判になった例もあるくらいです。脊髄の手術がうまくいっても、術後にまひが出ることもあるそうです。脊髄の構造や血管の走り方が一人ひとり違っているのに、うまく対応できなかったためです。
「医者も常識にとらわれず、人体は画一的でなく、さまざまなバリエーションを持つということを承知で向かってきてくれないと困ります」と、内臓逆位の人は声を大にして叫びたくなるでしょう。
医療技術が進歩したとはいえ、手術の用具やガーゼを体内に置き忘れて縫合してしまった例もあります。常識とか、うっかりではすまされません。
医事法には「統計的な危険」という文言があり、患者が常識的な体でなかった場合のリスクに逃げ道をつくっているようですが、手術前にリスクがどんなものか説明し、患者や家族の同意を得るインフォームド・コンセントは、ぜひ実行してほしいものです。
なお、一般に右利きの人は脳の左半球が優位で、言語中枢も左にあります。左利きの人は優位半球が左にある人が6割、右にある人が4割といわれています。この常識にしたがって誤診が起きた例もあります。
その場合、判明したことは、「利き腕が右で、脳の優位半球も右」という人もいた例です。医学の分野でも「常識」にとらわれるのは、人命にかかわるだけに怖いものです。
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