その場がど~んともりあがる雑学の本
とにかく話をつなげたい雑学<第3章>
日本料理は「目で食べさせる」とよくいわれます。その一般的なのが幕の内弁当。あの狭い空間に、みごとに多様が一元化されています。『角川国語辞典』などには「握り飯とおかずとを詰め合わせた弁当」としか出ていませんが、三省堂『廣辭林』(1925年の初版)には「芝居などの辯當となす握飯(東京の方言)」とあります。
舞台の幕が下りているうち(幕間)に食べるから「幕の内弁当」と呼ぶんだ、とその語源を説く人が多いのです。
ところが、異説が2つあります。
「あれに入っているおむすびは小さい。小むすびを幕内力士の小結と引っかけて幕の内と称したんだよ」ととなえるのは、長らく雑誌の編集長をつとめた、さる物知り。
島倉千代子の『からたち日記』などの作詞家であるとともに、雑学の大家でもある西澤爽氏の説は「戦国時代に幕営(幕を張った陣屋)で食べた野戦食だから、幕の内というんだ」。
それぞれごもっとも。要は、安くてうまければいいのです。その点、大阪駅や新大阪駅の八角形の折に入れた「八角弁当」などは推奨に値します。
なお、握り飯にしていないのに「幕の内」と銘打ったのがありますが、これは単なる折詰弁当ですから不当表示です。
「講談社+α文庫」所収
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