おつまみ横丁【瀬尾幸子】

おつまみ横丁


書籍名 おつまみ横丁
著者名 瀬尾幸子
出版社 池田書店(192p)
発刊日 2008.10.22
希望小売価格 1,050円
書評日等 -
おつまみ横丁

最初にお断りしておくと、小生、自宅でアルコールをたしなむ習慣を持ってない。だから、この本を本来の目的であるおつまみレシピとして買ったわけじゃあない。

カバーの見返しには、こんなキャッチがつけられている。

「横丁酒場で味わうような/素朴であきない、旨い定番おつまみを/185品取り揃えました。/しかも、少ない素材で/呑みながらでもつくれる/かんたんなおつまみを厳選。/今日の一杯、明日の一杯を楽しくする/ず~っと使いつづけてほしい酒の肴集」

書店で手に取り、「素朴であきない」「定番」「少ない素材」「かんたん」なんて言葉に惹きつけられ思わずレジに持って行ってしまった。小生、この本をおつまみではなく、朝食のおかず、あるいは夕食の付け合わせ用レシピとして利用している。

もうひとつお断りすると、小生、いわゆる男の厨房族ではない。上等の素材を揃え、時間をかけて凝った料理をつくる趣味はない。ただ、衣食住の基本を 自分でできるようにはしておきたい。男の自立などとたいそうなことは言わなくとも、自分のことは自分でやるのが楽しいだけだ。実際には朝食はほぼ毎日自分 でつくり、夕食はたまにつくる程度だけど。

実は今年の夏まで1年ほどニューヨークに滞在していた。朝はご飯に味噌汁で自炊し、夜も週に1、2度は日本食品スーパーで食材を買って簡単な料理を つくっていた。だから最低限のレパートリーはあっても、いかんせんバラエティーがない。この本はそこを補ってくれる。むろん、本のタイトルどおり酒のおつ まみレシピとしても役に立つ。

いま朝食のおかずに、いちばん気に入っているのがこれ。「ねぎ入り卵焼き」。

「 一 卵を割りほぐし、塩を加えて混ぜる。  二 フライパンにごま油を熱し、長ねぎを入れてしんなりするまで中火で炒める。  三 強火にして一を流し入れ、大きくかき混ぜて半熟になったら手前から巻いて形づくる。片面に焼き色がつくまで焼いて、食べやすく切り、器に盛る」

卵焼きはこれまでもつくっていたけれど、プレーンで砂糖と塩を加えていた。これ、子供が小さかったころつくったレシピそのままだから、子供が好む味 つけなんだね。それを長ねぎを入れ、塩だけで味つけると、酒のつまみ用だからさっぱりした味になる。ちょっと醤油をたらしてもいい。

もうひとつ、よくつくるのが「きゅうりのバリバリ」。

「きゅうり1本はすりこぎや空き瓶などでたたいて食べやすい大きさに割り、皿に盛る。フライパンにサラダ油大さじ2、にんにくの薄切り1かけ分、鷹 の爪2分の1本を入れ弱火にかけ、香りが立ったらしょうゆ大さじ4を加え、ジュッと音がしたら火を止めて、そのまま皿に盛ったきゅうりにかける」

ほんの2、3分でできるのがいい。普段はぬか漬けかサラダでしか食べないきゅうりが、ほんのひと手間でおかずらしくなるから面白い。

これもよくつくる。「トマトチャンプルー」。

「トマト1個は、くし形に切る。フライパンにサラダ油大さじ1を中火で熱し、トマトを炒めて形がくずれかけたら塩・こしょう各少々をふる。溶き卵1個分を加えて大ざっぱに混ぜ、卵が半熟ぐらいになったらでき上がり」

トマトチャンプルーは中華料理のメニューにもある。小生も、中華料理店の味を出そうとごま油を使ったりオイスターソースを使ったりしてみたけど、火 力のせいか、何かが足りないのか、レストランの味は出ない。結局は、この本の塩・こしょうのシンプルなレシピが家庭ではいちばんいいみたいだ。

本の構成は2つに分かれている。前半は「横丁酒場の定番おつまみ」と題して「とりあえず」「煮物・蒸し物」「焼き物」「炒め物」「揚げ物」「和え物」「豆腐」「〆に一品」「小鍋立て」に分類されている。

基本は1ページに1品目。一、二、三と3項目にまとめられたレシピ。いかにも簡単につくれそうでしょ。材料(1~2人分なのが便利)。1、2行の料理のポイント。加えて中高年にも読みやすい大活字。おいしそうな写真。版元は料理本の老舗だから、さすがにツボを心得てるね。

後半は活字中心の「気軽につくれるおつまみレシピ集」。ここで品数をかせぎ、合わせて185品が紹介されている。小生、けっこうこっちの料理をつくることが多い。

短時間にできるものばかりじゃなく、なかには手間のかかるものもある。先日は「たこと里芋のやわらか煮」に挑戦してみた。

「 一 里芋は皮を包丁で厚めにむく。  二 鍋にすべての材料(注・ゆでだこの足、里芋、塩、しょうゆ、みりん、だし汁)を入れて火にかけ、沸騰したら煮立たない程度の弱火にする。  三 たこが柔らかくなるまで、2時間以上コトコト煮る。味をみながら、煮汁が濃い味に煮詰まったら、そのつど水またはだし汁を足して、味をととのえる。器に盛り、さやえんどうをあしらう」

2時間以上コトコトとは煮なかったけれど、二まですませて外出し、帰ってから三の調理をしたら、いい具合に味が沁みこんでいた。たこもまずまず柔らかく煮えて、これなら居酒屋と比べられるかもと、ひそかに自慢したりして。

ほかにも、これからの季節は鍋ものが旨そうだ。油揚げと長ねぎだけの「あぶすき」、「水菜とはまぐりの鍋仕立て」、塩さばと大根の「船場鍋」など、今度やってみよう。

なお、姉妹編として『もう一軒 おつまみ横丁』も出ている。(雄)

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