街を歩いていると、小料理屋の入り口などに、塩をピラミッド型に盛ってある光景をよく見かける。これは、客寄せのための「おまじない」で、中国の故事からきている。
昔の中国の皇帝は、たくさんのお妾(めかけ)さんを囲っていた。美妃たちは、それぞれ邸をあてがわれていて、皇帝は牛車に乗って夜な夜なその邸宅を訪れる。皇帝といえども好き嫌いもあるし、たとえ公平に一巡したとしても、自分の番がくるにはかなりの日数がかかる。そこで、ある美妃が一計を案じた。牛車が通る時刻を見計らって、自宅の門前に塩を盛っておいたのだ。
牛は塩が大好きで、一度なめはじめたらテコでも動かなくなる。皇帝はやむを得ず、その邸に立ち寄るというわけだ。小料理屋の盛り塩は、この故事にちなんでいるのだ。
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