谷中銀座を歩いていたら、後ろの方から「ねえねえ、ショウガのことを、なんで谷中ショウガって言うんだろう?」という声が聞こえてきた。たしかに、現在の谷中周辺にショウガ畑は見あたらない。それでも、季節になると壁のお品書きに「谷中ショウガ」を追加する居酒屋なども少なくないし、たまにスーパーなどでは「中国産 谷中ショウガ」などという表示を見かけたりもする。(おいおい)
実は、江戸時代にショウガが採れたのは、現在の台東区谷中ではなく、JR日暮里駅に近い諏方神社周辺、すなわち荒川区西日暮里付近ということになる。この辺りで穫れるショウガはあまり辛くなく、味噌をつけて食べると風味と歯ざわりがよく、江戸庶民に人気があった。ちょうどお盆のころが収穫期で、谷中の寺社や、周辺の商人や職人などが、競ってお中元に利用したことで江戸中に評判が広がり、「谷中」の名はショウガの代名詞になった。今でも市場などでは「葉ショウガ」の符丁として使われているのだという。
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