同時多発テロの直後に、テロリストがこの小説を参考にしたのではないかと話題になったのが1996年に刊行されたトム・クランシー「合衆国崩壊」(新潮文庫)という作品だ。
しかし、それ以前にも、米国本土での無差別テロを描いた作品はある。トマス・ハリス「ブラック サンデー」(新潮文庫)がそれだ。パレスチナゲリラが、スーパーボウルが行われる競技場にプラスチック爆弾を積み込んだ飛行船もろとも激突して、臨場する大統領と8万人の観客を皆殺しにしようというもの。著者はAP通信などの政治記者を歴任しているだけに、リアリティーがある。こちらは1975年の作品で、つまり25年以上も前から、米国本土での無差別テロの可能性が懸念されていたということになる。この問題の根の深さを感じさせる。
この作品は、トマス・ハリスのデビュー作。彼は後に「レッド・ドラゴン」「羊たちの沈黙」「ハンニバル」などを発表することになる。(2001.11.30)
- トマス・ハリス「ブラック サンデー」新潮文庫
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