プロレスには、ベビーフェイス(善玉)とヒール(悪役)が付き物だが、とりわけ魅力的なヒールがいてはじめてベビーフェイスが引き立つという構図になっている。
「私プロレスの味方です」で知られる村松友視の作品に「7人のトーゴー」(文春文庫)という短編がある。第2次大戦後、アメリカに輩出した日系人悪役レスラーたちの話だ。「7人のトーゴー」の「トーゴー」は悪役としての象徴的な命名で、実際にはグレート東郷、トシ東郷(ハロルド坂田)、ミスター・モト、キンジ・シブヤ、オーヤマ・カトー、デューク・ケオムカ、グレート・ヤマトを、米『レスリング』誌は「7人のトーゴー」と呼んだのだ。
最近のプロレスが今ひとつ元気がないのは、馬場、猪木に匹敵するヒーローが現れないというだけでなく、ブッチャーやタイガー・ジェット・シンといった魅力的なヒールがいないというのも一因かもしれない。(2000.2.3)
- 村松友視「7人のトーゴー」文春文庫
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