バーのカウンターで隣り合わせた男は鉄道員だった。鉄道員と言っても、もちろんあの寡黙な高倉健ではない。
その男は、酔うほどに饒舌になり、そのうちポケットから鍵束を取り出して自慢げに話し出した。「この鍵は、電車の昇降口の鍵なんですよね。本来は自動だけど、まさかのときのために現場の人間はみんな持っているんです」「JRも私鉄も、地下鉄も、すべて共通の鍵なんです」「鉄道マニアの間では2万円の値が付いると聞いています」
う~む、1本2万円か。この世知辛い世の中、金に困っているやつは内緒で合い鍵を大量に作っているかも……。(1999.8.13)
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