ある文庫ない文庫本がわかる
書籍名 | ニッポン文庫大全 |
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著者名 | 紀田順一郎・谷口雅男監修、岡崎武志・茂原幸弘編 |
出版社 | ダイヤモンド社(550p) |
発刊日 | 1997.11.20 |
希望小売価格 | 3,800円 |
書評日等 | - |
当たり前のことだが、各出版社は自分の文庫の目録を店頭に出しているし、その中に絶版本のリストを載せている時も多い。しかし、それでは時々にしか出ない各々を集めなければならない。また、取次に問い合わせれば教えてはくれるし、神田の古本屋で秀逸な所はパソコンを駆使して在庫状況と絶版状況を知らせてはくれるがいずれも手間だ。
待望の書である。しかも、読書家で知られる作家・紀田氏と、九州で独自に文庫だけの古本屋を開き、電話で問い合わせれば、ほとんど即座に答えてくれる古本屋会長・谷口氏が監修とくれば瞠目せざるをえない。
執筆人も豪華だ。つまり、読み物としても秀れている。が、いかんせんマニアック過ぎる嫌いはある。例えば、第2章の「春陽堂文庫考」。この岩波文庫、改造文庫に次ぎ古く、かつ春陽文庫として継がれている文庫はルビ付き挿絵付きの始として知られるが、主として創刊(昭和6年)より戦前を中心とした解説で、古本として入手可能なものもあるにはあるが、これを読んでも選びようもない作家・作品が多い。
なお、「春陽堂文庫」は、昭和17年8月現在の調べで、発行件数は岩波の1349件に次ぐ1099件を記録している。第3章の表紙写真は楽しいが「世にも珍しい稀少文庫カタログ」にも同じことがいえ、稀少というより中身の分からぬ文庫のオンパレードで疲れる。
第4章が、総目録だ。絶版であったり、目録であったり、年代を限ったものだったりするが全200pで全体の3分の1強を占めている。しかし、残念ながら各社別、その後の第5章の「ふるほん文庫やさん在庫目録」のサービス文庫ではじめて五十音順で引けるが、これも絶版または品切文庫。
つまり、これはあきらめさせる書と断じることができる。もっとも、これでも便利は便利、懐かしさで当たってみるか、楽しいコラムに一休みする、そんな一冊である。(修)
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