ひところの.com(ドットコム)ほどではないにしても、社名に@(アットマーク)を付ける会社が目に付くようになった。ご承知のように、アットマークはメールアドレスに使用されている記号だが、この現象は、電子メールの普及によって、このマークがそれだけ市民権を得てきたということになるのだろう。
その発音からも分かる通り、意味は英語の前置詞atに当たる。まてよ、この記号、電子メールが普及する以前にもどこかで見たことのある記号だなと感じる人も多いに違いない。それもそのはずで、本来の用途は商業記号で「単価」につけるものであった。10個100円なら@10円ということになる。メールアドレスに使用されることになったのは、さして深い意味はなく、メールアドレスの考案者が、たまたま意味の近いマークとして採用したに過ぎないということらしい。あらかじめキーボードに組み込まれている記号であるというのも大きな理由のひとつかもしれない。意味合いから、デザインもatからきたと思われがちだが、これは英語のatに当たるラテン語adをデザイン化したもの。
わが国では素直に「アットマーク」と呼んでいるが、国や地域によっては、マークを生き物に見立てて、「カタツムリ」(韓国・イタリア)、「象の鼻」(スウェーデン・デンマーク)、「クモザル」(ドイツ)、「小ネズミ」(台湾)などと呼んでいる。こちらの方が遊び心があってよろしい。(03.07.04)
- 佐久間 治「英語の語源のはなし」研究社
- 読売新聞校閲部「日本語『日めくり』一日一語」中公新書ラクレ
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