昭和30年代、都心にもそこここに原っぱが残り、オニヤンマやアゲハチョウなどが飛び交っていた。そんな、牧歌的な時代に、国鉄(現JR)田端駅からそれほど遠くない隅田川沿いに、東京電力の千住火力発電所が建っていた。
発電所の4本の煙突は、菱形に建てられていたため、それぞれの煙突の陰になって、見る場所によって、4本が3本に見えたり、2本や1本に見えたりした。人呼んで「おばけ煙突」。子どもたちは、どこまで行けば1本に見えるかと、知らず知らず遠出をしてしまったものだ。
初期のつげ義春には、この煙突をテーマにした「おばけ煙突」という作品がある。
- つげ義春「おばけ煙突」二見書房
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