誤訳とは-雑学大事典-こ


誤訳


高校時代の恩師から著書をいただいた。書名は「誤訳の構造」。クラス会を毎年開いているとはいえ、卒業してから35年以上もたっているというのに、英語成績最悪の不肖の教え子にまで本を贈ってくださる先生のお心遣いには頭が下がる思いだ。

我々が学生時代のころは、翻訳といえば、表向き大学教授の名前が出てはいるものの、その実、ゼミの学生に下訳をさせてまとめただけ、というずさんなものも少なくなかった。いまは専門家が台頭しているので、大分読みやすくなってはいるが、まだまだ誤訳は少なくない。翻訳もののミステリーなどを呼んでいて、まったく意味が通じない一行に出くわすことがままある。明らかに誤訳である。例えば、こんな例。
The boy puts down his coffee mug, approaches him with a beam.
彼はコーヒーカップを置き、ビームを持ったまま近づく。
おいおい、ビームってなんだ? これって訳者自身も意味がわかっていないぞ、絶対。「beam」には梁などの意味があるけれど、ここは笑顔の意。笑顔で近づく、のである。この本には、誤訳の中から特に啓発性と活用性の高い188の実例が紹介されている。

先生の名前は中原先生。「英語の中原」といえば、知る人ぞ知る受験英語の権威だ。この本は1987年に吾妻書房から出版されたが、このほど聖文新社から改訂版が出た。翻訳に携わる人はもちろん、英語好きはぜひ手にとってほしい。(03.07.28)
- 中原道喜「誤訳の構造」聖文新社

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