つげ義春を辿る
書籍名 | つげ義春幻想紀行 |
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著者名 | 権藤晋 |
出版社 | 立風書房(208p) |
発刊日 | 1998.2.20 |
希望小売価格 | 2,300円 |
書評日等 | - |
全学連世代の後半、全共闘世代の前半に圧倒的な支持を得たつげ。「ねじ式」を初めて見た時の衝撃は忘れがたいだろう。原風景がそこにあるからだ。
民家から出てくる機関車、シュールさはダリ、キリコに匹敵する。漫画、
劇画全盛のころに、正しく漫画の世界に大きな楔をうったつげの原点は旅、ひなびた山里、さびれた温泉にこそあると著者はいう
当初、CD-ROM制作として企画され、つげ作品のモデルとなった土地を取材している途中でぼしゃったのを季刊に転用し、さらに加章しつげとの対談も足して完成させたもの。名門・青林堂に属し、例のガロの編集に携わっていた訳だからまことに環境がよい。事実、文中にも企画にかかわらないつげ跡辿りが随所に出てくる。
図版(つげ漫画)および土地々々の写真も紙質にマッチし撮影も素晴らしく、しっとりとしていてかつ陰影がありつげに相応しい。おまけに旅ガイド、行き方や訪ねた旅館などが紹介されている。
つげの作品の大方は叙景が克明なペンタッチ、人物はまさに漫画という造りだが、原風景は岩瀬湯本にあるという。その風景は和風キリコの「道の神秘と憂愁」そのもの。浴びる日、ためにたった一人の人物はほゞ漆黒そして影が長くこちらへ延びている。「ねじ式」に次ぐ評判の「海辺の叙景」は断崖絶壁のある大原漁港、同じ千葉の大多喜はエロティックな少女が登場してつげの自己表出への入り口を築いた「沼」の出発点である。
この様につげの証言もまじえて、つげの創作過程があかされていく。さて、「ねじ式」はといえば、本人いわく外房の太海であり、訪ねると機関車が現れる同じ民家の狭間があるという。迷路めいた佇まいは作品そっくりというから行ってみたくなる。
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「ねじ式」が映画化、この夏をホットに石井輝男監督が!
古くは新東宝「女王蜂」を撮り、東映に移っては網走番外地シリーズで勇名を馳せた石井輝男監督が、つげ義春作品の巨峰「ねじ式」を遂に映画化、今夏7月18日より東京はBOX東中野と渋谷ユーロスペースで公開、大阪でも。これは5年前の「ゲンセンカン主人」および3年前、弟つげ忠男の「無頼平野」に続くつげシリーズ、あの人は今……かと思えばしぶとい石井輝男、もっとも硬軟、エロイロとりまぜた監督ならではのもの、さすが。(修)
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