さらば闇の馬券師【冬木哲哉】

さらば闇の馬券師

ほんまかいな、喋っていいの


書籍名 さらば闇の馬券師
著者名 冬木哲哉
出版社 双葉社(306p)
発刊日 1998.5.25
希望小売価格 1,400円
書評日等 -
さらば闇の馬券師

これは小説ではなく、事件当時に知れれば間違いなく塀の内におちた人の実録である。作者は文中でも実名で登場する。南関東公営競馬を舞台にノミ屋〈私設馬券屋・JRA正規窓口で買わずに呑んでしまう組織、もちろん違法でお縄頂戴となる)にも手を出す単なる競馬好きが昂じて内輪の人と交わるようになり、最初は持ちかけられ、ついには積極的に八百長競馬演出に乗り出したダンベイ(旦那・出金者)の懺悔噺(ざんげばなし)である。

この御仁、最高学府を出て上場企業に勤めるも、「馬券師」(「多額を賭ける人」ほどの意)稼業がやめられず、ついにアウトロー人生に転じたという、その間23年、やっと筆を取った渾身の処女作、がこの書の惹句である。

デキレースの買い目一点ですむ完全試合(つまりは、すべての騎手・馬にあらかじめナシが通してあり、結果は狂いようが無し)を夢見て、禁制のバカラ・カジノバーで知り合った、お金がいつもピーピーの2人の騎手をテカ(手下)に着々と謀り事は成功していく。

手法は引っ張り、出遅れ、潰し、太目作りなどで、その間、騎手はもとより、調教師、厩務員、馬主までも巻き込んでいく。だが、彼らは後発組に過ぎず、不成功なケース、裏切り者の存在に、もっと大きな裏の世界を知り、そちらからの直接の果たし状を受け、もちろん敗北する。白昼夢はこれにてジ・エンド。

「競馬とは筋書きのあるドラマ」が時に本当だと思っているファンは意外に多い、それも読みの内に入れているマニヤ気取りの人も現に居る、例えば一人八百長(ラフプレーで勝たしてもらった一人恩返し)、周り八百長(騎手の引退最終戦)などがそれに当てはまる。

しかし、この話が事実なら、これは読みようがない。十ウン年前とはいえ、参画者は現存している点が怖い。さらに組織は、依然としてドラマを人知れず上演しているはずである。

嘘とも思えないが、やゝお金の単位が大きすぎる(もし、その通りなら配当が怪しい)点と、誤字脱字が多いのがこれを読まされる善良なファンには逆に救いである。作者の舎弟への愛情や、細やかな女人との交情が殺伐たるこの物語のオアシスであり、癒しにもなっている。(修)

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