シンクロニシティの謎【大上和博】

シンクロニシティの謎

時空を超えて、共時性の不思議


書籍名 シンクロニシティの謎
著者名 大上和博
出版社 青春出版社(234p)
発刊日 1999.6.1
希望小売価格 495円
書評日等 -
シンクロニシティの謎

シンクロニシティ概念の創始者はかのユング
奇妙な、事象の時空を超えた一致現象はだれもが一度は経験したことがあるだろう。心理学者のユングはこの類のオカルト現象には懐疑的ではあったが、論文「共時性ー非因果的連関の原理」で我が体験を告白し、それからシンクロニシティ概念を創出したと述べている。

女性の患者が夢で黄金のスカラベ(コガネムシ)をもらったと告白した途端、カウンセリングしていた部屋にまさしくコガネムシが飛来した。夢と部屋とは何らの関係を持っていない。しかし、患者がユングに懸命に語ろうとしたこと、ユングが患者を熱意をもって理解しようとしたこととが共鳴しあい、偶然の一致を生んだと考えられる。

この因をユングは人間の意識の“元型”に求めた。感覚している表層意識、その奥の深層意識、そのまた奥にあるのが“元型”であり、なべての人に通底していて、人の発生来遺伝子的に継いできたもので、その証左は誕生、結婚、死の行動様式にみられる人種、時間、空間を超えた共通現象にあるという。

この意味のある偶然の一致現象をシンクロニシティと概念付けたわけである。これをずっと以前から存在する神の創造行為とさらに考える立場をユングは取っている。

いささか小難しい振りから始まっているが、な~にこの本はこうした不思議一致現象を集めた面白本である。例えば歴史の偶然の一致、長いローマ帝国時代に、時を隔ててよく似た2人の皇帝が居た。

いずれも名前はルチウス、5年間の在位、片や「人々の復興者」いま一方は「世界の復興者」と共に崇められ、内戦の後の即位、さらに彼らの後3人目の皇帝の始末もそっくり、約350年を隔ててローマ復興を成し遂げ2人の皇帝はスラとアウレリアヌス。

歴史の繰り返しは先見者の作品との間でもみられる。ヒトラーが魅せられていたワグナーのオペラ「リエンツィ」の筋はまったく後のヒトラーの終生をなぞったものだったし、例の豪華客船の顛末を小説で先に描いた作家の話も有名だ。

また、イギリスのデーリーテレグラフ紙の場合は、そのクロスワードパズルの中に時のノルマンディー上陸作戦の合い言葉が埋め込まれていたかどでスパイの嫌疑をかけられたという。また1994年には同じ紙・クロスワード中で、4日後のフェリー「エストニア」号の悲劇の予告があったともいわれている。

すべての因果が今に解き明かされるか・・・
数字の符合もおもしろい。拾った当たり馬券の払戻金がそっくり帰宅してみたら税金として請求されていた。あるいは入着順が馬番・車番と全く同じ、いずれも確率的には超まれ。

また、互いに時空が異なる人同士が同じ人生を歩むという「パラレル・ライフ」も紹介されている。市井ではアメリカはメリーランド州の同姓同名ノワンダ・ジョンソン・メアリーさんの場合、生誕日、兄弟の位置、共に移り住んで同じ病院で同じ数の子供を産み、おまけに車は同じ、最初の保険証番号も4ケタは同じと念がいっている。リンカーンとケネディ両大統領の人生の酷似さ、また、モーツァルトとアリアガの、人生と曲自体の相似さ具合。

もっとも、数学の最先端では、「蝶の羽ばたきによるわずかな風が、数カ月後の台風の進路に影響を与えているかもしれない」という考え方が解かれようとしており、友人の数学者は真剣に取り組んでいるし、今にすべてのいまの現象はそれ以前のすべての既象の帰結であることが示されるのかも知れない。

最後に、共に心理学の巨星ユングとフロイト(ユングの師であったともいう)は友人同士であったが、片や起因をシンクロニシティに、一方はリピドーに求めたために、袂を分かったことを伝えておこう。(修)

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